パナソニックショップ ふくでんみなみ店福島市松川町

オーナー國嶋哲也さん
巨大量販店やネット通販の台頭が昨今、あらゆる小規模事業の存続を脅かしている。
また経営者の多くが「社長」としての矜持と自負から限界までがんばってしまい、後継者にきちんと引き継げないまま引退するケースも珍しくない。小規模事業主にとって、後進に良い形でバトンを渡すことが、事業の存続を左右する課題になっている。
『ふくでんみなみ店』はいわゆる“まちの電器屋さん”。商工会が経営者と後継者の間に入り、後継者が地域にゆるやかに着地できるよう、計画的に事業承継を進めている。

時間をかけ、丁寧につなぐ技術と心

夫の思いと妻の願い

福島市松川町のJR松川駅にほど近く、のどかな田園風景に抱かれる様に建つ『パナソニックショップ・ふくでんみなみ店』。
平成7年に開店してから、近隣の人たちの暮らしの一角を担ってきた。創業者でオーナーの國嶋哲也さんに話を聞いた。
「還暦を迎える数年前から、漠然と引退について考え始めました。会社員の定年とされる65歳で仕事を辞め、従業員の丹野功一さんに店を譲りたいと思いながら、言い出せずにいたんです」。
まだまだ現役という気持ちはあっても、屋根に上がるアンテナ設置や、寒冷地仕様の重いエアコンを扱う仕事が、体力的に辛いと感じるようになってきた。20年間、共に働いてくれた丹野さんが、自分が創業した40歳を目前にしていることも、ずっと気になっていた。突破口を開いたのは、店番をして支える妻の意外な一言だった。
「店のくすんだ壁紙をなんとかしてちょうだい!」
夫が漠然と考えていたことと、妻の小さな願いを知った商工会の女性スタッフが、思ってもみなかった提案をしたことから、事態が動き出す。
「事業承継を5年計画で考え、その間、後継者を育成しながら、意見を出し合う」。
「店舗を体験型に改装し、新しい接客スタイルを定着させる」という打開策だ。

女性目線で店舗を改装

俄然張り切ったのが奥様である。
「どうしたら、商品を試しやすいか?」を徹底的に考えると、“家庭のダイニングルーム”のイメージにたどり着いた。料理教室や健康器具講習会に対応できる様、中央にアイランドキッチンとテーブルを配し、トイレを新たに設置した。
國嶋さんは言う。
「私の場合、仕事相手のほとんどは、そのお宅の女性です。妻や商工会の女性スタッフの意見を尊重したのは、お客様目線の店作りという点で理にかなっているんです」。
ちなみに既存の窓枠を増築部分にリユースするアイディアは丹野さん。一緒に考えたことで、丹野さんにも“自分の店”という自覚が生まれたという。
「長年の“あうんの呼吸”というか、100キロの冷蔵庫も丹野さんと持つと軽く感じる様な安心感があります。ただあまりに近くて、思いがうまく伝わらない時があるので、商工会に緩衝材になってもらいながら、経営ノウハウなどを伝えていくつもりです」。
ちなみに改装後の展示会での来店数は前年の2.8倍、売上は1.5倍を記録した。

“電器屋さん”は地域に必要な機能

「量販店の客は店に付き、小さい店の客は人に付くと言われています」と國嶋さん。
「一番の気がかりは、何十年も付き合ってくれた高齢のお客様の引継ぎです。電球1個届ける様な小さな仕事で得た信頼関係は、すぐにはむずかしいかもしれませんが、丹野さんも同様に頼りにしてもらえるよう、何度も2人で足を運ぶつもりです」。
“定年退職”したら、県内の温泉巡りをしたいと語る國嶋さん。
「でも私はきっと、お客様から求められれば、いそいそとリモコンスイッチの修理にうかがうと思うんです。リタイヤしてもずっと“電器屋さん”でいたいですね」。
…どうしてですか?
「『ありがとない』と言われると楽しいですからね」。笑い声が真っ白な壁に響いた。

月1回を目安に料理教室を開催

松川町商工会・女性部と連携し、IH調理器具を使った教室のほか、丹野さんの『イマドキ男子の簡単料理教室』も企画中。

ふくでんみなみ店 パナソニックショップふくでんみなみ店
國嶋哲也
福島市松川町沼袋字北125
平成7年6月
家電販売業
家電修理、販売

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

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