荒川畳店県中・県南

四代目店主 荒川陽一さん
石川町で明治時代から130年続く、地元に定着した「荒川畳店」。
四代目店主の荒川陽一さんと関東から戻り五代目修行中の荒川卓也さんに話を伺った。

時代の流れに抗う

『東日本大震災や2019年の水害が、新築住宅やリフォームでの床施工における畳からフローリングへの移行を加速させた。畳店として大きな痛手となるこの流れをなんとか変えようと試行錯誤する日々が続く。
荒川畳店は経営理念のひとつに「お客様が何を望んでいるかをしっかりと聞き、希望に沿うにはどうすれば良いかじっくりと考える」ことを挙げている。何よりも顧客とのコミュニケーションを大切にする四代目の想いがここにある。
顧客の願いは「快適な暮らし」であるという基本に立ち戻り、畳の弱点である施工やメンテナンスの煩わしさを克服し、更にフローリングの欠点を補うような新しい畳を商品として扱おうと考えた。

新しい商材を武器に

『薄畳』は従来の6cm厚から1.5cm厚へと薄くして施工を容易にしたのが特徴である。
また、若い世代の畳離れへのアプローチとして、従来の畳のイメージを変える「和モダン」を掲げる『カラータタミ』は現在、新築やリフォームだけでなく保育施設への導入も提案している。
さらに、高齢者やその介護者からの「フローリングは冷たい・滑って危ない」「畳は水に弱い・掃除が面倒」などの声に応えた『衝撃緩和・洗える畳』は、フローリングにはない畳の温もりを 強調し、従来のメンテナンスの煩わしさを克服した新しい畳で、導入には介護保険も適応できるという今の時代にベストマッチした商品だ。
これら新しい畳は製造工程が従来のものより少し面倒で近隣地域で扱う店がまだ少ない。さらに、塩ビレザーというコーティングで他店との差別化を図り『アラカワブランド置畳』という 新たな活路を見出した。

課題解決のために

ただ現状ではこれら新しい畳はまだまだ認知度が低い。また、新たな設備投資のための補助金申請や税務など事務処理が煩雑で、ITが不得手な四代目には頭の痛い問題が山積した状態。そこで地元の商工会へ相談した。
初めは現状に対する想いを只々ぶつけるのみだったが、担当する経営指導員がしっかりとその想いを受け止めてくれた。問題点を整理し、税務そして補助金の書類作成を手伝うなど一緒に対策を考え支援してくれた。「一時期ほぼ毎日のように電話や面談で話し合ってました」と経営指導員は語る。さらに店舗に新商品の看板を設置するなど認知度向上のためのアドバイスも受けた。

四代目から五代目へ

商工会と試行錯誤している中、2022年春に新たな戦力が加わった。
五代目となる荒川卓也さんが事業継承を決意し、大手住宅建材メーカーを退職して戻ってきたのだ。
五代目が存分に力を振るえるようにと商工会の伴走支援の中で作業場を拡げ、新商材製造のための新たな設備も導入した。
四代目の陽一さんは、一級畳技能士や神社仏閣畳技能士など畳製造に関する資格を取得し、それが他店との差別化にも繋がっているが、「資格よりももっと大事なのは、お客様が何を求めてい るのかをじっくりと聞くコミュニケーション力。これからの10年で焦らず無理せずしっかりと引き継いでいきたい」と語る。

五代目の決意

「大手メーカーと違い、自営業の良いところは自分の意思で仕事を決め、スピード感を持って進められることです」五代目 卓也さんの眼は真っ直ぐにその先を見つめている。新商材をわかりやすく伝えるオリジナルのチラシも自分で作成した。
「うちの弱点でもある営業にも力を入れていきたいですね」保育施設や介護施設などに自ら新しい畳の魅力を伝え歩く。
「最近は、事業継承の重圧よりも仕事の楽しさや充実感の方が上回ってきた気がします」
日々成長する頼もしい姿が窺える。

新しい戦力となる五代目の活躍に畳業界の希望ある未来を見た。
荒川畳店の十年後が実に楽しみである。

荒川畳店や 荒川畳店
荒川陽一
福島県石川郡石川町字下泉336
明治20年4月
畳製造業
石川町商工会
https://arakawa-tatami.jimdofree.com

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

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