有限会社 強清水 元祖 清水屋会津エリア

山口和久さん
強清水は会津若松と二本松を結ぶ旧二本松街道の会津藩滝沢本陣に通ずる峠にあたり「強清水湧水(こわしみずゆうすい)」の湧く休み所として民謡「会津磐梯山」にも歌われている。
ここには峠の茶屋としてこの清水を生かした蕎麦を出す店が何軒かある。『強清水 元祖 清水屋』は、江戸時代後期よりこの地に店を構えて150年あまり。この歴史ある店の五代目店主、山口和久さんにお話を伺った。

蕎麦とまんじゅうの天ぷら

「みなさんに自慢できるのが蕎麦とまんじゅうの天ぷらです」朴訥とした人柄の山口さんが語る。
『まんじゅうの天ぷら』とは、餡子の入った茶まんじゅうに衣をつけ油で揚げた昔から会津地方に伝わる郷土食で「よくお葬式の時などに出てきたのを覚えてます」とのこと。元祖清水屋の『まんじゅうの天ぷら』は少し皮が厚くもっちりした食感の自家製である。
元々まんじゅうを仕入れていた業者が製造を止めてしまい、代わりを探したが中々これだという味のまんじゅうが見つからず、自社で作ることにしたのだという。昔からの伝統の味を守りたいという強いこだわりが伝わってくる。

常連さんの声を大切にしたい

「昔からのお客様のご家族が代々お店に食べに来てくれるんです」昔から変わらない味を守り続けているからこそ、お客様も何代にも亘って通い続けてもらえる。
「「常連さんの声を大切にしたい」という店主。ある時、お店の建物の老朽化、特に玄関から見た内装が悪いとの指摘を受けた。これは店主自身も以前から感じていたことで、お店の前で帰る人もいたという。「なんとかしなければ」コロナ禍でもあり次第に客足が遠のく状況に少なからず焦りも感じていた。

待つよりも行動すること

2022年、この状況を変えようと商工会に相談した。店主もかつて商工会青年部に所属していたことがあり、担当の経営指導員はその当時の青年部担当者だったので「相談しやすかった」という。商工会へは「いつ来てもらえるかと待つだけではなく、自分の方から積極的に足を運んでみたほうがいい」と、これは今悩んでいる仲間への店主からのアドバイスである。そして、経営指導員からは「コロナ禍が過ぎて景気が回復するのがいつになるか、今は予測するのが困難な時。それを待つよりも行動することのほうが効果的です」という回答を得た。「一緒に考えましょう」と、ここから二人三脚が始まった。
現状の分析から始まり、何回も話し合いを重ねて改善案を検討して優先順位を決めた。まずは、常連さんの声にあった玄関から見た内装に着目。お客様に気持ちよく入店していただくため、床の改修事業として、商工会の支援を受け「持続化補助金」を申請。1年かけてじっくりと改革を進めていった。

できることから少しずつ

結果、持続化補助金採択となり2023年1月にお店の床を新しく張り替えることができた。椅子やテーブルの数を減らし空間に少しゆとりを持たせ、店内のイメージが一新した。「客数も若干ですが増えました」ここでようやく店主が少しだけ笑顔を見せた。お客様からも「店内が広々すっきりとした雰囲気で入りやすくなった」との声をいただき、売上も前年比3割ほどアップしたという。しかし築45年あまりの建物「まだまだ改修するところはたくさんある」とのこと。「一度に全てを新しくすることは無理なので、できることから少しずつやっていきます」店主の目は真っ直ぐ前を見ている。

夢よりも何よりも

「この地で永く続けていきたい」と語る店主。立地の利点として国道49号線・294号線という2つの国道の合流地点にある交通の便の良さが挙げられ、『強清水の湧水』というブランド力と『蕎麦』や『まんじゅうの天ぷら』という名物があることで、今後さらにネットやメディアの活用による情報発信力の強化や新商品の開発など、新たな構想や広がる夢はある。
しかしそれよりも何よりもまずは「昔からのお客様を大切にして、昔ながらの味を守ることに重きを置きたい」と、静かにそして少し力を込めて語る店主の話を伺って、100年以上続く名店の理由がここにあるのだと確信した。
「ぜひ『強清水 元祖 清水屋』の蕎麦とまんじゅうの天ぷらを食べにきてください」暖簾の奥から店主の少しはにかんだ笑顔が見えた。

有限会社 強清水 元祖 清水屋 有限会社 強清水 元祖 清水屋
山口和久
福島県会津若松市河東町八田字強清水406-1
昭和53年6月
飲食業(そば屋)
棚倉町商工会

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

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