有限会社 和田印刷会津若松市北会津町

代表取締役 和田信之さん
パソコンやスマートフォン等が普及し、今まで紙で読んでいた文字を画面で眺める機会が増えた。
一方、電子書籍が思っていたほど普及しないのは、印刷された内容が記憶に残りやすい特徴や紙の扱いやすさに、人々が改めて気付いたからとも言われている。印刷物の需要はなくなることはなく、改めて可能性が模索されている。
『和田印刷』もそんな流れの一隅を担う。
新しい印刷機の導入をきっかけに、個人事業主である「小規模農家」に注目し、あらたな販路を開拓した。

農産物直売所で見つけたビジネスチャンス

創業51年、老舗のこだわり

『和田印刷』は須賀川市のほぼ中央に位置し、今年で創業51年目を迎える老舗の印刷会社。のどかな田園地帯の中、真っ白な外観と機械が刻む規則正しいリズムでそれと分かる。代表取締役・和田信之さんに話を聞いた。
「印刷物はすべてがオーダーメイドですから、一言で印刷と言っても、実はとても自由で、奥が深いものなのです」。
一番シンプルと思われる名刺印刷でさえ、用紙・書体・デザイン・刷り色等により、完成品の選択肢は無限に広がる。
「お客様との対話から、細かいニュアンスやメッセージを受け止めて印刷物に反映していくことが、この仕事の大変なところであると同時に、商売の醍醐味です」。
近年は、インターネットで注文を受けるスタイルが浸透してきているが、創業以来の訪問営業にこだわりたいと和田さんは考えている。
「お客様と直接会い、時間を共有し、納得していただける仕事を心掛けています。時にはプライベートなお付き合いに誘っていただき、そこで新しいお客様を紹介されることもあります」。
老舗ならではの営業スタイルは、紙の印刷物に似て古くて新しく、なんだか温かい。

個人の顧客と仕事がしたい

印刷会社は昨今、多様化したニーズに応えるために、設備を定期的に更新することが求められている。またSNS普及による需要の減少や、企業の受注を得るための価格競争など課題は多く、和田さんも新たな顧客獲得の必要性を痛感する。
経験を活かし、すぐ取り組めることを考えると、『個人の顧客と仕事がしたい』という思いに行き着いたという。岩瀬商工会に現況を相談、情報を共有し、毎日のように意見を交わした。
“ヒント”は意外な場所にあった。
「市内の農産物直売所を訪れた時のことです。商品のパッケージはいかにも手作りという感じで、見栄えのするものではありませんでした。家庭用プリンターで作ったらしいシールにインク代などのコストがかかっていることも容易に想像できました。生産者の思いを引き出せていない現状を目の当たりにし、“お手伝いできるのでは?”と直感したんです」。
そんな状況をチャンスととらえ、野菜や果物を直売所に出荷している“小規模農家”に的を絞る。商工会のサポートを得て高性能の印刷機を導入、“小ロットの商品を迅速に低価格で提供する”システムを構築した。
農家の「お手伝い」は新規の販路であると同時に、提案の効果が実感できる楽しみがあったという。

商品

受注型から企画・提案型の営業へ

先代の頃からつい最近まで、顧客が固定化していたことで、「依頼があってから足を運ぶ受注待ち体制」が多かったと和田さんは振り返る。「小規模農家」への販路開拓をきっかけに、「企画・提案するタイプの営業体制」に達成感と可能性を感じている。
次の一手として、みずから企画し提案したのが福島県の伝統工芸品とのコラボだ。
須賀川市で鍾馗(しょうき)様の絵幟などを制作・販売している事業主に対し、掛軸や額に入れて飾るタイプの色紙の商品開発と即売会の企画を持ち込んだ。
「端午の節句に家々に絵幟旗を立てるという地元の伝統行事は、若い世代の住宅事情に合わないという課題がありました。実際に即売会を実施したところ、売れ行きは上々で手応えを感じました。安価で手に取れる精緻な色紙を提案したことで、印刷技術が伝統の継承に一役買ったかたちです」。
これからは商品開発だけでなく、情報発信にもチャレンジし、様々な角度から地域とつながっていきたい。老舗の未来の選択肢は無限だ。

有限会社 和田印刷

光輝性のゴールド(金)色のトナーを搭載した印刷機の導入で、様々なシーンに合ったチラシやパンフレットなどの印刷物を提案できる。ゴールド色は高級感が表現でき、商品の差別化がはかれると好評。デザイン性の高い印刷物による販促効果が期待できる。

有限会社 和田印刷 和田印刷
和田信之
須賀川市袋田字守子92−8
昭和41年10月
印刷業
チラシ・ポスター・広報誌等の印刷
カレンダー・包装紙・バッジ等のオリジナル商品

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT