分家 玉や会津

佐藤華那さん
南会津郡下郷町で今も江戸時代の宿場町の面影を残す大内宿。
街道沿いの茅葺き屋根の街並みは国選定重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。その大内宿の入口そばに店を構えるカフェ『分家 玉や』の佐藤華那さんに話を伺った。

お蕎麦屋さんやお土産屋さんではなくあえてカフェを

『分家 玉や』が大内宿に店を出したのは24年前。当初は蕎麦を中心とした飲食店だったが、5年前にスイーツを提供するカフェへ転向した。
「大内宿にあるというのがうちの最大の強みです」と語る目に力が入る。
大内宿でカフェは難しいと言われたが、お菓子作り職人は佐藤さんの小さい頃からの夢でもあった。始めた当初、カフェは『分家 玉や』一件のみだったが今ではスイーツを出す店が大内宿にも数件ある。
お菓子作りのポリシーは地元、特に大内宿周辺の食材を使うということ。「無理をしない範囲である分だけ使います」
売れるからと言って無理に他所から食材を取り寄せたくさん作ったりしない。今ある分でできる数を作る。またこれが逆に希少価値としてブランド力を高めてもいる。

中でもお客様に人気なのはモンブランケーキ。「今年はお声がけいただいてたくさん栗拾いをしたので皮を剥くのが大変でした」と微笑む。
その季節の旬の食材を取り入れ、大内宿で作られたお米を使った米粉のロールケーキも好評だ。

この土地に興味を持って欲しい

大内宿も昨今のコロナの影響で大型観光バスが連れて来てくれる団体のお客様は減少した。しかし個人のお客様が観光コースの一部としてではなく、あえてここを選んで来てくれるようになり、逆に一人ひとりの滞在時間は以前より長くなったという。
それだけお客様に大内宿の魅力を今まで以 上に伝えることができるようになった。
ベーシックな方法でのお菓子作りに地元の食材を使うことで、そこに地元農家さんの思いを乗せて特別なものとしてお客様に召し上がっていただく。「食べることで農地の維持に繋がるという価値をお客様に提供しています」その言葉にはこの土地に興味がある人を増やしていきたいという願いが込められている。
佐藤さんの思いは、リピーターの多さにも繋がっている。お客様には『いらっしゃいませ』よりも『おかえりなさい』という気持ちで接しているという。

客足が遠のく冬

現状では大内宿の観光客は季節ごとの波に影響されることが多い。特に雪の多い冬は客足が減り、一年を通して収入は安定しない。
そこでオンラインショップを活用して冬場の補填をする必要があった。またテイクアウト商品を充実させて客単価を上げ、さらにオンラインショップ利用に繋げることも必要だと考えた。

イメージが変わった

佐藤さんは、持続化補助金の申請がきっかけで商工会へ相談したが、それまでは商工会といえば確定申告や街おこしイベントのイメージしかなく、少し敷居が高いと感じていたという。だが相談してみると親身になって話を聞いてくれ、経営革新計画書作成のためのサポートを始めキャッシュレス決済の導入やショップカードの作成、米 粉の製粉機や麹を作る機械の導入など佐藤さんの思いを一つひとつ具体的な形にしてくれた。
「今モヤモヤした気持ちがあるのなら取り敢えず相談してみるべきですね」経営相談員と互いに笑いあう姿から信頼感の強さが窺える。

これからの大内宿は

「お店が順調であるためには、土台になる大内宿が文化財として魅力ある土地であり続ける必要があります」『土地と繋がるカフェ』というコンセプトは揺るがない。
将来的には宿泊事業や、例えば大内宿のお婆ちゃんたちが作る藁で編む虫かご作り体験のような、アクティビティとしての体験型事業も手掛けたいという夢がある。
「子どもたちにいろんな職業の選択肢と少しの夢を与えられる、そういう大人になりたいですね」と優しい表情で語る。
大内宿の茅葺き屋根が建ち並ぶ宿場の風景だけでなく、まわりの里山を含めた景観やそこで生活している人々のこと、また周りで農作物を作っている人たちの思いなどいろいろなことに関心 を持ってもらい、この土地を好きになって欲しい。一貫してその思いが胸にある。
そして、これからの大内宿に同じ思いを持つ人を増やしていくために、佐藤さんは歩み続ける。

分家玉や 分家玉や
佐藤則子
福島県南会津郡下郷町 大字大内字権現上358
平成12年10月
飲食業
下郷町商工会
https://tamaya358.thebase.in

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