CRISCA県北エリア

新井 惠美子さん
小さな駅舎に続くカエデ並木が四季を彩り、どこか異国の街並みを彷彿とさせる。
30年前、故郷である伊達市梁川町に移り住み、洋菓子店を開業した新井惠美子さんに、コロナ禍の今の思いを聞いた。

キーワードは“わざわざ”まちの真面目な洋菓子店30年目のリ・スタート

「人と人とのつながりを大事に」

新井さんは出産を機に、納得のいく子育てをしたいと考え、東京の仕事を辞め故郷の梁川町に移り住んだ。細々と始めた店はスタッフやお客さんに恵まれ、洋菓子一筋30年の有名店となった。
ケーキの基本的なレシピは創業当時から、ほとんど変えていないという。流行に合わせる事なく、クリスカの味をつらぬいてきた。「クリスカの味を好きで通ってくださるお客様を第一に考えています」と新井さん。
人と人とのつながりを大事に、お客様との対話を重要視してコミュニケーションをとるように心がけている。
急速に広まりつつあるネット販売も、顔が見えない接客には違和感があり、今は考えていない。
「クレームが入った時に、お詫びに行かれる距離でないと……」。新しいことに躊躇しているのではない、真面目なのだ。

わざわざ来店促進計画

2018年夏、「以前から店のファンでした」と語る商工会の担当者が来店する。それまで商工会を利用した経験がなかったが「看板を新調したい」と打ち明けると、国の持続化補助金の申請を勧められた。
意見交換をするうちに、新井さんは“ある言葉”を思い出したという。福島市などの他地域から時間をかけて来店した人たちが、決まって口にした言葉。
「この店のお菓子を食べたくて“わざわざ”来ました」。
流行やネットの波に乗らなくても、お客さんが“わざわざ”買いに来てくれる店。キーワードと直感、補助金採択に向けた経営計画を“わざわざ来店促進計画”と命名した。
看板が外側の刷新だとすると、新作ケーキ開発は内側からのアピール、こぼれるばかりに華やかなフルーツを乗せた『ミニデコケーキ』が誕生する。さらに来店機会を増やすため、ピアノコンサートを企画した。
以前は売れることと『クリスカ』らしさの接点を探し、県内都市部への出店を模索したこともあったが、経営コンサルタントからアドバイスを受けたことで、売上減を立地や時代のせいにして逃げていた自分に気付いたという。
また後継者と今後のビジョンについて話し合うきっかけができた。商工会に背中を押されたというのが率直な感想だ。

胸に落ちてきた思い

『クリスカ』ではコロナ禍の影響で2020年の春夏に一旦落ち込んだ売上が秋以降、回復傾向にあり前年並みを維持している。
理由として考えられるのは、イベントが簡素化され、小規模の集まりが主流となったこと。引き出物としての焼き菓子セットの需要が高まり、直接的な売上増につながっている。少ない数から柔軟に対応できる「まちの洋菓子店」の小回りの良さに加え、手作り菓子の温かみを皆、希求しているのかもしれない。
ある秋の夕刻の配達帰り、遠くから眺める看板に明かりが灯る。地色の黒に反射した光が文字の白さを柔らかく際立て、まっすぐ続く並木道の灯台みたいだ。“なかなか良い感じ”の看板を見上げた時、不意に「ここでがんばろう」という思いがストンと胸に落ちてきた。
店と同じ年の後継者は、パティシエ修行中。「息子につなぐ日まで店を守りたい」。
還暦過ぎの母は、何度目かのスタートラインに立っている。

CRISCA(クリスカ) CRISCA
新井 正勝
伊達市梁川町広瀬町23
平成3年12月
菓子製造販売小売
ケーキや焼き菓子などの洋菓子及びパンの製造販売。
雑貨用品などの商品も取り揃えております。
店内には、ケーキと一緒にドリンクメニューも楽しめるcaféスペースもあります。
伊達市商工会
販路拡大・開拓
https://www.crisca.net

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

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