金中林産 合資会社会津エリア
他社が請け負えないスタイリッシュなデザインに対応できる技術で、業界では一目置かれた存在だが、地元では……。
代表社員の武藤桂一さんに話を聞いた。
物置部屋にあった物
武藤さんは2代目。創業約60年になる2018年、商工会の担当者がヒアリングに来社した際、話のタネになればと3畳ほどの物置部屋に案内したことがあった。
「個人的な趣味で、年1点の商品開発を自分に課しています。完成したことで満足し、そのまま入れっぱなしになっていて……」と部屋に詰め込んだ試作品を見せると、「これは宝の山です!」と担当者の目が輝いた。
その後、商工会から熱心に県の経営革新計画書作成を勧められた。本音を言えば、当時はOEMの売上が安定していて、新しいことを始める必要はないと考えていたが、熱意に押される様に申請し、承認された。
そんな経緯で“県のお墨付き”をもらうと、うれしい気持ちの一方で、審査で指摘された販売のノウハウ不足が気になりだした。
そういえば、「何を作る会社?」とよく聞かれ、地元での知名度は低かったな。
経営のプロからホームページやパンフレット制作を勧められたこともあり、「オリジナル商品を作りたい」と考える様になった。
自社ブランドを立ち上げる
早速、商工会に相談し申請した「地域活力創生事業補助金」が無事採択され、レーザー加工機を導入した。木工品には単品開発や小ロット生産が容易という強みがあるが、以前は彫刻やマーキング工程を手作業や外注で処理していた。加工機を購入したことで、ネーム刻印等が自社で可能になり、オリジナリティが喜ばれるノベルティや記念品等の、それまで作らなかったアイテムも自信をもって受注できるようになった。
翌2019年、さらに「小規模事業者持続化補助金」を受け、ロゴマーク・ホームページ・パンフレットを制作、南会津産森林認証材を使用した木製品ブランド『Kanerin』を立ち上げる。会社の方向性を社外に示しただけでなく、社内の意識や顧客からの信頼も高まり、仕事が進めやすくなったと実感した。「ロゴが勝手に営業してくれました」と武藤さんは笑う。
それにしてもこの数年、おとな椅子などの「大きい物」に加え、子ども椅子や玩具といった「小さい物」に力を入れてきたのはなぜだろう?
「大きい物を作ると、その過程で切断された小さい木材が生まれます。小さくても良質な素材ですから、有効利用できないかと考えました。また複雑なデザイン家具に対応できるNCルータは、以前からある主力機ですが、曲面や細かい作業を安全に処理できるため、それを使えば“今ある物”だけで小さい物も作れると考えました」。
新たに物を動かさず、身近にある良質な材料や道具から価値を創出する発想
“今あるモノ”の豊かさ
2020年にはコロナの影響を受けOEM受注が激減したが、減益分を補填するかの様に小児科医院の家具・幼児施設の椅子・企業のノベルティ等の受注が続いている。家具にもステーショナリーにも共通する使いやすさと美しさこそ『金中林産』の真骨頂。クオリティの高い企画を速やかに提示できるのは、武藤さんが年1点の試作を今も続け、頭の中の引き出しを充実させてきたからに他ならない。
倉庫には天井近くまで、木材のストックが積み上げられている。担当者と久しぶりに再会した際「お世話になりました」「本当に助かった」と同時に声が出た。技術力・企画力・会津の木材・人との出会い……あの日開けた物置部屋の扉の先には、“今あるモノ”の豊かさが広がっていた。
名称 |
---|
代表者 |
所在地 |
創業 |
業種 |
事業概要 |
サポート |
支援区分 |
公式HP |