農産物加工施設「ぴかりん村」会津若松市北会津町

理事長小林久子さん
会津盆地の中央に位置し、古来より城下町の食を支えてきた北会津町。清冽な水とミネラルたっぷりの土壌が育む果物や野菜は、香り高く素材そのものの味が濃い。
『ぴかりん村』ではそんな農産物の風味を大切に、添加物を加えることなくジュースや味噌に加工している。女性ばかりで立ち上げた事業は、周囲の心配をよそに14年目を迎え、最近は新商品「りんごチップ」が高い評価を得ている。
会津のかあちゃんたちが小さな歩幅でコツコツと作る商品は、作り手の姿そのままに、素朴で優しい滋味がある。

真面目に取り組む自慢のジュース

初心者ばかりの船出

『ぴかりん村』が近隣で収穫される果実を集め、ストレートジュースにする受託加工を始めたのは平成15年。中心となって設立に関わった理事長・小林久子さんは振り返る。
「メンバー全員、経営経験がない女性だったため、構想の段階では用地や建物の手配・機械の調達・村役場への補助金申請・ジュースの作り方から会計簿の付け方に至るまで、どこから手を付けたらいいのか分からない状態でした。それらを1つ1つ、サポートしてくれたのが商工会です。親身の支援がなかったら、途中で挫折していたかもしれません」。
操業初日、“成果をあげなくては!”という気負いで緊張している小林さんに、ある関係者が声をかけた。
「これからここで、よーく遊んで下さい」。
途端に肩の力が抜け、スーッと楽になった。今でも心の支えにしているという。

味の違いは無添加の証

りんご

加工の仕事の8割は、近隣の生産者から持ち込まれた果実を搾る作業が占め、ビン詰めされたジュースは各生産者に戻されてから直販所等に卸される。店頭に並ぶビン1本1本の色や味が微妙に違うのは、搾る以外に何ひとつ手を加えていない証でもあるが、時には理解されず、クレームが寄せられることもあった。
『ぴかりん村』のトマトジュースには赤い“おり”が沈んでいる。リンゴジュースはリンゴの味だけがする。病気の時に食べた“すりおろしリンゴ”みたいな……当たり前のことなのだが、大量生産品と違う後味に戸惑い、改めて「本物とは?」と考えさせられた。
新商品はサクサク軽い「りんごチップ」。油で揚げ砂糖をまぶす従来の製法と異なり、スライスしたリンゴを乾燥加工させることで、自然の甘味を凝縮させた。開発の理由は「新たに機械を導入せずに、現状設備で製造できる商品」だったから。地に足の着いた経営がうかがえる。
経費を節約するために、民話風のパッケージデザインは自分たちで考えた。最初は男性に頼んでいた力の要る機械掃除も、いつの間にかできるようになった。
かあちゃんたちがその都度、工夫し協力して乗り越えていく姿を目の当たりにすると、いくつになってもどこにいても仕事は生み出せるのだと思えてくる。

【受賞歴】
会津若松市 地産地消大賞
財団法人食品産業センター 会長賞
福島県中小企業団体中央会 優良企業賞
他受賞多数…

震災を経て考えた“ぴかりん村”らしさ

東日本大震災後の風評被害は『ぴかりん村』の売り上げにも及んでいるという。良い時と悪い時を経て、小林さんは自分たちらしさとは、容器やデザインに凝るより、“搾るだけ”の製造方法と無添加の品質にあるのではないかと考えるようになった。間違えたことをしないで作り続けていれば、やがて分かってもらえるとも。
「そんな理念やノウハウを良い形で若い人たちに引き継ぐためにも、今のうちに組織の体制を整えておきたいですね」。
最近は商工会スタッフに“引っ張り出され”、イベントでのリサーチや販路開拓に力を入れている。苦手だったパソコンの導入も検討中だ。
「できないことは商工会に助けてもらいながら、ホームページの開設や頒布会での直接販売、企業との取引等も視野に入れて、震災前の売上高に追いつけ追い越せの勢いで頑張りたいです」。
ちなみにメンバーの平均年齢は60歳、全員が『さすけねーず』という民話劇団の“女優”でもある。農業などの家業と加工作業の傍ら、月一回のボランティア公演をこなしているというから驚く。
「よーく遊ぶ」とは「ひたむきに取り組む」ことだと、丸い背中が雄弁に語る。一途でタフな会津のかあちゃんたちのプライドだ。

みそ

受託加工果物をジュースに搾る

最初は近隣の農家を対象に始めたが、小ロットで頼める気軽さが口コミで広がり、最近は県外からの依頼も多い。果実10kgから受け付けている。大豆と米を持ち込む味噌の受託加工も人気。

企業組合ぴかりん村 ぴかりん村
小林久子
会津若松市北会津町
平成15年2月27日
清涼飲料・食品製造業
農産物の加工販売、農産物の受託加工

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

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