麺屋五蔵田県中・県南エリア

鈴木幸広さん
福島県棚倉町逆川で本格手打ちの白河ラーメンを提供する『麺屋 五蔵田(ごぞうだ)』。
2003年に貸店舗で店を構え、2013年に現在の地に移った。地元に愛され20年目を迎えた棚倉町内でも人気のラーメン屋さんである。代表の鈴木幸広さんにお話を伺った。

「こだわり」という言葉が嫌いなんです

店名は鈴木さんの生まれた地、白河市東下野出島五蔵田から取った。「人に使われるのが嫌いで昔からラーメンが好きだったこともあり、それを仕事にしようと思いました」ラーメン店は景気に左右されにくいとの判断もあった。白河市内の有名ラーメン店でしばらく働きその後、独学でラーメン作りを学んだ。
ラーメン作りはどんなところにこだわってますか?との質問に「こだわりという言葉が嫌いなんです。自分の好きなものを突き詰めているだけ」ときっぱり答える。知識や理論の前に好きかどうかの感覚を大事にしている。かと思えば「お客さんの残したスープの量を確認して、今日はこれだけ残った、この理由は何だ?とあれこれ考え、日記につけています」と日々旨いラーメン作りの追求には余念がない。
お昼時には行列ができるほどのラーメン店。店主の「こだわりに捉われず自分で美味しいと思ったものを提供する」という強い意志が感じられる。

ラーメン屋さんが自家焙煎の珈琲って

「16〜7年前になりますが、会津美里町のカフェで珈琲を飲んだ時、アレ薄いなと思ったんです。でも美味しかった。それまでインスタントの濃い珈琲ばかり飲んでいたのでちょっと衝撃でした」それからあちこち珈琲を飲み歩くようになった。
「店ごとに味がそれぞれ違って面白いな」と珈琲の世界にのめり込んでいったらしい。自身を「好きになったらとことん追求するタイプ」と分析する。
コロナ禍で売上が落ち込んでいたこともあり、店で手が空くお昼2時ごろから常連客に珈琲を提供するようになった。
「まだまだ数はそんなに出ないですけど、飲んだ人からは美味しいねって声をいただいたりします。意外にラーメンにも合うんですよ」珈琲の提供はお客さんとの会話のきっかけにもなっている。

本格的に珈琲豆の販売を

「自分が好きな珈琲豆をこの店で販売しよう」と思い立ったのは良いが、本格的に自家焙煎の珈琲豆を販売するには自家焙煎機が必要だ。それも全国的にも数少ない「“直火式焙煎機”を入れたかった」とのこと。
直火式は炎で直接珈琲豆を焙煎するため扱いは難しいが、豆の持つ香りやコクを最大限に引き出すことができる。その導入費用の補助金申請のために商工会に相談してみた。
相談当初は商工会の会員ではなかったので「商工会って何をしてくれるところですか?」から始まり、相談を受けた経営指導員も「ラーメン屋さんがなぜ珈琲豆の販売?」という疑問があったが、傾聴と対話を重ねお互いを知り、信頼関係を築く中で徐々にそれは消えていった。
様々に検討するうち、経営指導員からは、現状でラーメンは人気があるが売上が横ばいである課題や今56歳の店主に後継者がいない等の課題を解決するため、補助金申請という現状の問題解決だけでなく、10年後を見据えた事業承継を含む経営の改善に取り組むべきとアドバイスを受けた。
こうして現状分析から課題設定、販路開拓の検討、SNSの有効活用等々、事業者の利益に結びつく支援をスピード感をもって進めていった。「事業の現状を整理する良い機会になって有り難かったし、何よりこのスピード感が自分としては良かったです」と語る。

その名も『幸珈琲』

お店で販売する自家焙煎珈琲豆を鈴木さんの名の「幸広」からひと文字取って『幸珈琲(ゆきこーひー)』と名付けた。結果、ラーメン店での自家焙煎珈琲の認知度は徐々に高まり、新たな売上獲得に繋がっている。
一人当たりの客単価も少しずつだが上がってきた。「まだ販売数は少ないですが、お陰様でラーメンの方が忙しいので、この位がちょうどいいんです」自分の好きなことをやっているというある種の余裕が感じられる。また事業の副産物ではないが、娘さんが『幸珈琲』の豆を使った焼き菓子やクッキーを製造してイベント等で販売するようになり「娘との会話も増えました」と嬉しそう。
これからの課題のひとつに事業承継がある。「後継者をどうするかですね。あと10年は頑張るつもりですが」と両拳を力強く握る。これからも10年後を見据えた事業承継の道筋を検討するなど、事業の発展及び継続に向けた商工会の伴走支援は続く。

麺屋五蔵田 麺屋五蔵田
鈴木幸広
福島県東白川郡棚倉町逆川前山62-1
平成15年5月
飲食業(ラーメン店)
棚倉町商工会

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

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