有限会社クリエイティブ・ロダンいわき・相双エリア
福祉を学び、理容師・美容師のダブルライセンスを持つ代表取締役・鈴木明夫さんに、話を聞いた。
「何かできないかな?」
福祉系の大学で学んだ20歳の時、理容院を営む父に訪問理美容業を提案した。“困っている人に何かしたい人”だった父は、訪問部門を立ち上げた。
東日本大震災が起こった24歳の時、「何かできないかな?」と言った息子の言葉をきっかけに、父は市内の関係者を募り、被災者に数千人規模の無料シャンプーを提供した。
3年前、そんな父が急逝。鈴木さんは内郷にUターンし事業承継したが、ノウハウ・経営状況・人脈といったバトンを、何ひとつ受け取れないスタートとなった。
その時「このままじゃダメだよ」と声をかけてきたのが、会社の“良い時も悪い時も見てきた”商工会の担当者だった。「担当者の本気の指摘は図星でしたし、私も考えを口にすることでピンチの中、次の一歩を踏み出せた気がします」。
体制を立て直した鈴木さんは、積極的に経営・戦略に関するセミナーに通い、販路開拓の“尖った”情報を得たという。
「商工会主催のセミナーは、時代を先取りした企画ばかりでおススメです」。秘密を打ち明ける様に言った。
進化する『ロダンバス』
総合病院に40年以上の出店経験がある同社は、介護知識と理美容に精通するスタッフを擁するが、訪問理美容業には、要介護者以外への施術はできない法律上制約※があった。
車椅子を押す妻、付き添う娘……髪を整えたい人は、病人以外にもいるのに……。「困っている人に何かしたい」と2018年、クラウドファンディングで出資を募り、理美容車両『ロダンバス』を購入。移動式“店舗”と認定され、誰にでも施術が可能になった。
鈴木さんは早速、介護施設を中心に200軒の飛び込み営業をかけたが、営業ツールを持たずに行ったため、ほとんど話を聞いてもらえなかったという。
同じ頃、中古車両にもともと備え付けられていた椅子が洗髪時に不評で、オーダーが単価の低いカット中心になる問題も浮き彫りになってきた。そこで担当者の提案を受け、翌年の「小規模事業者持続化補助金」「買い物弱者対策事業」にエントリー、採用されチラシ制作と多目的椅子購入に取り組む。
「メリットをうまく伝えられなかった経験から、ビジュアルに訴える重要性を痛感し、事業内容が一目で分かるチラシを作成し配布しました」。
さらに多目的椅子導入によりシャンプー環境が劇的に向上したことで、作業効率が上がり利用者数が増加した。「パーマやカラーリングも勧めやすくなりました」。
※訪問理美容業における利用者の制限は、時期や地域によって異なる
理美容院は最も身近な社会
その結果、事業承継時は維持するだけだった訪問部門の予約が、現在は3か月先まで埋まっている(2020年11月時点)。
髪を整えた人たちは、「きれいになった」ことより、「また美容院に来られた」ことを喜ぶという。理美容院は外出が不自由な人にとって、最も身近な社会なのかもしれない。
「コロナ禍にある高齢者に訪問理美容が必要なのは明らかです。ノウハウを伝え、この仕事を広めたい」と力を込める。
2019年台風19号の時、『ロダンバス』で被災地に300ℓの水を届けた鈴木さん。父から子へ仕事のバトンは上手くつながらなかったが、“親切”のバトンなら、ずっと昔に受け取っている。わかっていたのだ、ふたりとも。
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