Fuku farming flowers双葉郡川内村

福塚裕美子さん
震災を機に川内村に移り住んだ後、いったん花の本場ドイツで学び、
平成30年9月、双葉郡で1軒となる花屋を開業した福塚裕美子さん。
花の“本場”を見る夢をかなえた後に再び、村に戻った理由とは……。

夢をかなえた私を待ってくれていた懐かしい村

夢を後回しにして来村

福塚裕美子さんは東日本大震災後、川内村を訪れた際、自然豊かな景色や、収穫したての野菜を分け合う人の温かさに触れ、強く心ひかれた。
自分にできることはないかと移住を決め、耕作放棄地を借り米作りなどの農業に取り組んだ。
3年後、村が落ち着きを取り戻す過程を見届けた福塚さんは、来村で先延ばしになっていた夢“ドイツの花屋修行”を実現するために、村を離れることを決める。
村の人たちに「花の“本場”を見て来ます」と挨拶した際のこと、思わず「帰ってきます」と約束してしまった自分に、自分がびっくりした。
約4年後、本当に戻ってきた彼女を、村の人達は驚きながらも、家族の様に迎えてくれたという。しかし人口約2,600人の村に当時、花屋を維持できる消費者需要はあったのだろうか。彼岸や母の日といった特定のニーズ以外に、花を届ける習慣がなかったとも言われている。
「私が住みたい場所は川内村、やりたい仕事は花屋……つまり“川内村で花屋”です……それに約束しちゃったから」と笑った。

自作の企画書で本気をアピール

“帰村”して早速、『川内村商工会』に赴き開業の希望を伝えた。実はかねてより創業資金の支援を受けたいと、企画書を準備していたという福塚さん。補助金申請には問題点も多い内容だったが、そこまで作った本気が認められ、アドバイスを受けることを勧められる。
経営指導員に手伝ってもらいながら、自己流の内容を事業計画書の形式に合わせて修正した。その甲斐あって、審査のヒアリング調査では具体的にきちんと伝えられたという。
「経営指導員は今も、私の想いが独りよがりにならない様に、伴走者の立場で、新たな支援や物件等の情報収集など、全方向から助けてくれています」。
現在の主な仕事は移動販売と予約販売、そしてワークショップ等の指導にも力を入れている。
移動販売は川内村・楢葉町・広野町・小野町の商業施設内に商品を持ち込み、小さな店を週1回ずつ出している。人が集まるきっかけが少ない地域だが、開店日を楽しみに通ってくれる常連客も増えてきた。
予約販売はインスタグラムやフェイスブック等SNSで、季節やイベントごとに商品や情報を発信しやり取りするほか、店頭や電話でオーダーを受けている。催事・開店祝い・誕生日といった予約販売が売上全体の半分以上を占める月もあることから、地域の中で花に触れるニーズが増え、贈る習慣が定着しつつあることがうかがえる。

花は心のゆたかさを映す

親しくなった年配の方と女子会トークに“花を咲かせて”いた時、「東日本大震災後の3年間は、足元に咲く花にまったく気づきませんでした」と打ち明けられた。
毎年、庭の同じ場所に咲いていたはずなのに、目に入らなかった。福塚さんの花を見てはっとし、昔自然に親しんでいた気持ちを取り戻し、庭の手入れを再開したという。花屋は季節の花に乗せて、心の“ゆたかさ”を運ぶ仕事だと、福塚さんは改めて確信したという。
川内村は人の姿より車の往来が多く、移動に便利な地域になっている。福塚さんの次の目標は出店だが、次の次は様々な業種の人と集まりたいと考えている。この村を、通り過ぎる場所でなく、訪ねてもらえる場所にしたいから。
多年草は花が咲き終わっても根を残し、翌年再び芽吹き成長する。双葉郡ただ1軒の花屋は来年、再来年、どんな風に根を張り、どんな花を咲かせるのだろう。

Fuku farming flowers Fuku farming flowers
福塚 裕美子
福島県双葉郡川内村大字上川内地内
平成30年9月
花・植木小売業
フラワーアレンジメント・花束ギフトの制作販売、
プリザーブドフラワー・アートフラワーの制作販売、
フラワーアレンジメント教室(出張可)、スタンド花、イベントの装飾、
花苗、胡蝶蘭、観葉植物の販売、お庭や花壇などの植栽委託

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

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