株式会社 松竹工芸社県中・県南

小針悦也さん
1963年横浜で創業し、縁あって福島県西郷村に移転してから50年余り。
格式のあるホテルや世界的ブランドショップ、福島県議会議場などにも採用されている、自然素材にこだわった“壁紙”を製造する『株式会社 松竹工芸社』。
4代目となる代表取締役社長 小針悦也さんにお話を伺った。

強みは唯一無二の技術開発

壁紙の製造には自然素材を用いることにこだわり、現在は会津産をはじめとする国産の桐材を使用している。桐材は高級感があり、ほかの素材と比べて光沢が強く美しいうえ、温度や湿度による伸縮が少ないため、壁紙への加工や施工に適している。試行錯誤の末、たどり着いた素材が桐であったという。
量産される桐の壁紙は、立体の桐材を薄くスライスし、デザインに沿って型抜きしたパーツを組み合わせて台紙に裏打ちし、高温・高圧でプレスして製作される。松竹工芸社の強みは、「生産のすべての工程を自社で行っているため、他社には真似できない独自技術を開発できること」にあると胸を張る。
なかでも桐材のスライス技術は、通常0.11〜0.16mmの厚さでカットするところ、最薄0.07mmまで加工できるという。スライスされた桐は、向こう側が透けて見えるほどの薄さである。また、「木口づき」と呼ばれる年輪を美しくスライスする技術も、他社では容易に再現できない領域だという。
さらに、「最も自慢できるのが、桐材ブロックに色を入れて染める技術です」と語る。乾燥した桐は通常、水分をはじくため染色ができない。しかし同社の技法では、桐の道管に沿って染料が入り込み、その濃淡がひとつの意匠として生まれる。自然が描き出す紋様は、他の素材では生み出せない独特の美しさを放っている。

課題克服へ向けた伴走支援

こうした他社にはない独自技術を有する一方で、生産体制の弱さや大手メーカーへの依存によって利益確保が十分でないなど、いくつもの課題を抱えていた。商工会との関わりは、新規機材導入のための補助金申請を相談したことがきっかけである。その後、経営指導員と対話を重ねる中で信頼関係を築き、ローカルベンチマークを活用した経営の見える化を推進。同社の強みである「デザイン性の高さ」を着実に利益へと結びつけられるよう、伴走支援を受けてきた。さらに、専門家派遣や展示会出展に関する相談など、多岐にわたるサポートを得ながら、生産性の向上に向けて歩みを確かなものとしていった。

オリジナルブランド『VNDI(バンダイ)』

生産性向上と並行して、製品の販路拡大を目指し、オリジナルブランド『VNDI(バンダイ)』を立ち上げた。「日本中の誰が聞いても福島の企業だと分かるように」と会津磐梯山から名前を拝借したという。大手メーカーへ納品している既存製品との差別化を図る狙いもあった。
「当社にしかできない染色技法、象嵌や寄木を基にした独自の貼り付け工法、そして高度なスライス技術。これらを組み合わせれば一点物の壁紙を作ることも可能です」と語る口調には熱がこもる。
『VNDI』ブランドを立ち上げたことで、「お客様の方から声を掛けていただけるようになった」と手応えを感じている。日本国内のみならず、フランスの有名ホテルやアパレルブランドのショップからの受注もあったという。また、オリジナルデザインが“GOOD DESIGN AWARD 2018”を受賞するなど、その実績は着実に評価を高めている。
さらに、松竹工芸社が手がけた“会津桐”を使った壁紙は、福島県庁議場内の特別会議室にも採用された。その輝きの美しさは、ぜひ実際に目にして確かめたいところである。

この技術をひとつの産業に

現在の社員数は7名。生産を拡充するための人材確保は大きな課題であると実感している。また、多様な人が関わることでアイデアや知恵が生まれ、松竹工芸社の技術が壁紙以外の商品にも広がっていってほしいという思いもある。
「ゆくゆくは、ひとつの“産業”へと育てていきたいと考えています」と小針社長は語る。その言葉からは未来への構想が確かに膨らんでいる。
桐の壁紙には、一般的な壁紙にはない上質な光沢があり、光の当たる角度によって輝きが移ろう。見る者が歩くたびに、その視線に呼応するように多様な光の紋様が現れ、あたかもそこにファインアートが存在するかのような表情を見せる。
 今後どこかで、楚々とした輝きをまといながら佇む桐の壁紙を目にしたときには、ぜひ松竹工芸社の技を思い出してほしい。

株式会社 松竹工芸社 株式会社松竹工芸社
小針悦也
福島県西白河郡西郷村大字米字米村64ー1
昭和38年
壁紙製造業
西郷村商工会
公式HP https://peraichi.com/landing_pages/view/dsgbp/

福島県商工会連合会イノベーションサポート INNOVATION SUPPORT

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